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けんこう家族 第146号【4】

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ネコ先生の『神楽坂通信』Vol.15

光井 洋

院長補佐兼消化器内科 部長
光井 洋


皆様こんにちは。暑かった夏も過ぎ、過ごしやすい季節になりました。

8月中旬に近藤誠先生が亡くなられました。ご冥福を祈ります。近藤先生は「患者よ、がんと闘うな」というベストセラーを書かれた放射線科医で、多くの医師の関心も高かった方です。著書にちなんで、今回は「がんとは闘うべきか、どうなのか」について書きたいと思います。

まず近藤先生は、乳がんで乳房全摘術が主流を占める80年代に、いち早く縮小手術の重要性を指摘されました。これは功績と考えられています。そこからいかに発展したのかはわかりませんが、その後「がん放置療法」と呼ばれる考えを発表されます。その内容は、健康診断でがんと診断されるもののほとんどは進行が遅い「がんもどき」であり治療を要しない、また進行した形で発見されるがんに対しては抗がん剤による効果よりもその副作用の害の方が大きい、よってがんの治療は必要ない、というものです。「がんと闘うな」というメッセージがあまりに今までと逆でインパクトがあったために、一般の方の中に多くの賛同者を生み、社会現象になりました。確かにこの頃の抗がん剤治療は、吐き気などの副作用への対策も十分でなく、この本を読んで治療をやめた方も多かったと思います。

近藤先生は最初、「抗がん剤は体が辛くてもできる限り強力なものを使うべきだ」といった当時のがん治療の風潮に一石を投じたかったのだと思います。しかしあまりにも本が売れて、ご自身とその考えが有名になったため、極端な理論を推し進めざるを得なかったと推察します。結果、がん治療にたずさわる医師を中心に猛烈なバッシングを受けることになりました。

がんといっても色々な臓器にできて、悪性度もそれぞれ違います。患者さん個人の体質によってがんの進行性も変わるでしょう。抗がん剤が効きやすいがんもそうでないものもあります。それらのがんすべてを同一に論じるところに無理があるわけです。また、最近では抗がん剤治療も発展して有効性も上がり、副作用対策も進歩しました。

ですので現在では、「がんのことを良く知って賢く闘おう」というのが大事なことだと思います。まず主治医に、がんの種類(組織の型、悪性度など)と広がりの範囲を確認し、次に自分の年齢・元気さ・持病を考えます。その上で可能な治療の内容を聞き、人にも相談し、自分でも調べて、最も自分に合っていると思う治療を選ぶことが必要です。治療に迷う場合は、他の病院で別の医師の考え(セカンドオピニオン)を聞くのも良いことと思います。

がんを良く知る

最も残念なことは、一番有効な治療を行わずに病院に通わなくなったり、効果のない保険でも認められていない治療に高額を支払ったりして治療の時期を逃すことです。「がんと闘うな」が売れた理由の一つに、がんと闘うことを放棄することで一時的に苦しみから逃れて楽になることがあったのではないかと思います。多くの場合それは一過性の楽さであり、後で後悔する場合も多いと思います。がん治療が必要になった場合、「闘うな」ではなく「賢く闘おう」というのが真実だと思います。当院は各科にがん治療の専門家がいますので、よく話を聞いて賢く闘っていただきたいと思います。


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