スギ花粉症に対する舌下免疫療法は2シーズンを終え、その効果が実証されてきました。当科で治療を受けている患者さんでも「今までになく楽にすごすことができた」など、効果を実感された声を多数聞くことができました。そうした意味では、舌下免疫療法はスギ花粉症治療の主流の1つになりつつあります。ところで、アレルギー性鼻炎にはスギ花粉症のような季節性と、ダニやハウスダストを原因とする通年性があります。通年性アレルギー性鼻炎の治療も花粉症と同様に抗アレルギー剤と言ってアレルギーによって生じたヒスタミンなどの化学物質をブロックする薬剤が主として使用されてきました。しかし、通年性アレルギー性鼻炎の治療の難しいところは、花粉症と違って、症状が1年中続くところにあります。また、通年性アレルギー性鼻炎の患者さんは気管支喘息を合併率することがあり、鼻症状が悪化すると喘息も悪化することを日常よく経験します。そのため、鼻炎症状を抑えることが喘息のコントロールに欠かせません。つまり、患者さんは1年中抗アレルギー剤と縁の切れない生活を送らなくてはならないのです。そこで、ダニアレルギーに対しても減感作療法とよばれる治療がおこなわれてきました。しかし、長期間にわたる注射や、アレルギーを起こさせる物質を注射で体内にいれることによる危険性などが普及を阻んできました。そこで、ダニアレルギーに対しても舌下免疫療法が開発されました。これはダニエキスを濃度の低いものから高いものへ舌下していくことにより、アレルギー反応を抑えようというものです。具体的にはダニエキスを含んだ錠剤を舌下して、1~2分間保持した後、嚥下してもらうもので、3~5年間継続する必要があります。この治療の対象は血液検査でダニアレルギーが確認されていること、12歳以上で3~5年毎日内服が可能なこと、重症の喘息の合併がないことが挙げられています。また、ステロイド、抗癌剤、β遮断薬を使用している患者さんは対象外とされているため、継続している薬があれば、確認が必要です。治療の開始時期はスギの場合とは異なり、とくに制限はありません。また、妊娠中の患者さんは治療を開始できませんが、治療中に妊娠した場合は継続可能です。ダニの舌下免疫療法では、薬を舌下した際に口腔内の腫れや違和感といった局所的なアレルギー症状が治療開始後1か月程度は出現する可能性があるため、こうしたことも念頭において治療を受けていただく必要があります。治療効果は約80%に症状の軽減が認められています。ただ、スギ花粉と同様に治療終了後の効果は長期間持続しますが、残念ながら永続的なものではありません。また、non-responderとよばれる治療効果の低い方が約20%いることなどから、治療を開始するには今まで述べたことを十分理解していただくことが必要です。なお、この治療はごく少数ですが全身的な合併症がみられることから、舌下免疫療法に関する講習とe-learningを受講した医師のみが処方可能となっており、最初の服用の際は医師が立会い、最低30分の経過観察が義務付けられています。この治療を希望される患者さんがいらっしゃれば、当科で対応いたしますので、お気軽にご相談ください。