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白内障ではどのように見える?

図7
図7 クロード・モネ

白内障の患者さんには世の中がどのように見えているのでしょうか?世界がどのように見えているかを他人が知るのはなかなか難しいことですが、それをうかがい知る数少ない例があります。それは、白内障になった画家が描く絵の変遷です。有名なのは印象派を代表するフランスの画家クロード・モネ(1840-1926)の例です(図7)。モネは睡蓮(すいれん)を好んで描き、同じ構図の絵もたくさんありますので、年とともにその色使いやタッチが変化していくのがよくわかります。この変化のおおきな原因になったのが、白内障といわれています。ここでは、1900年(60歳)に描いた「睡蓮の庭」という絵(図8)と白内障に苦しんでいた1923年(83歳)に描いた「ジベルニーの日本風歩道橋」という絵(図9)を比べてみましょう。同じ場所を描いているのですが、違いは一目瞭然です。1900年の作品では、睡蓮の葉や花がはっきりわかるように描いてあり、色調も青緑色が多く用いられています。ところが、1923年の作品になると、輪郭がぼんやりとしており、何を描いているのかはっきりしません。色調も全体に黄色味がかっています。この変化は、美術館や画集でモネの睡蓮の絵の変遷を実際に比べてご覧になるとよくわかると思います。
モネの描いた絵のタッチが年とともに変化してきた原因は、白内障で光がさえぎられて網膜まで達しなくなり、輪郭がぼんやりとしか見えなくなると同時に、青系の波長の短い光が混濁した水晶体を通らなくなったために、網膜に到達する光が赤・黄系の色だけになり、全体に黄色味がかった色になったからです。ただし、白内障による色の見え方の変化はゆっくり起こるために、画家のような特殊な才能を持った人以外は気づくことが少なく、多くの方は、白内障手術をして青系の光が網膜まで再び到達するようになって初めて、色の違いを感じるのです。実際に、白内障になって「世の中が黄色く見える」とおっしゃる方はほとんどおられず、白内障手術直後に「世の中が青白く見える」と皆さんおっしゃいます。これは赤ちゃんのときの見え方に戻ったのであって、手術のために青白く見えるようになったのではないのですが、ゆっくりゆっくり白内障が進行して色の見え方も気づかないうちに変化していたのが、手術によって急に本来の見え方に戻った為に正しい色なのに違和感を感じるのです。

図8、9
図8、9


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