手術自体は昔と比べて飛躍的に安全になりましたが、合併症がゼロではありません。中でももっとも深刻な合併症が「感染性術後眼内炎(かんせんせいじゅつごがんないえん)」です。これはばい菌が目の中で増殖して眼の組織を溶かしてしまう恐ろしい合併症で、全国平均で2000件に1件起こるといわれています。残念ながら、現在の医療レベルではこの合併症を完全に予防することはできません。そこで、頻度としては少ないのですが、治療の時期を失すると失明してしまいますので、当院では現在入院手術を原則としており、手術前日入院、手術翌々日退院の3泊4日、または手術翌日退院の2泊3日の入院手術をおこなっています。
そのほかの白内障手術の合併症としては、水晶体嚢が破れる(破嚢)、チン小帯断裂(水晶体嚢を支えている部分が弱くて切れてしまう)、出血、網膜剥離、角膜混濁、眼内レンズの位置ずれ(偏位・落下)、その他があります。
手術後時間が経ってからの晩期合併症として、後発白内障(こうはつはくないしょう)、水疱性角膜症、眼内レンズの位置ずれ(偏位・落下)があります。
後発白内障は、眼内レンズを入れた水晶体後嚢が再び混濁して起こるもので、約20%の方に起こるといわれていますが、治療はYAGレーザー(やぐれーざー)で混濁した水晶体嚢を破って透明にすることができますので、入院の必要はなく、通院で行うことができ、痛みもありません。 水疱性角膜症は、手術による角膜への侵襲(悪影響)として、角膜内皮細胞が減り、角膜が濁ってしまうことで見えなくなる病気です。治療には角膜移植が必要です。眼内レンズの位置ずれ(偏位・落下)では、眼内レンズをとりだして、別の新しい眼内レンズを移植する必要があります。水晶体嚢に包まれた眼内レンズは、硝子体というゼリー状のものにからまっているため、多くの場合は硝子体手術を行い、特殊な方法で眼内レンズを目の壁に固定しなければならないため、初回の白内障手術より、時間が長くかかります。また2回目の手術であることと、手術の方法が複雑であるため、炎症が強く出たり、角膜が濁りやすかったりするため、術後直後は見えにくいこともありますが、眼内レンズがしっかり固定されていれば、しばらくすると見えるようになります。