肝臓で作られた胆汁(脂肪を吸収するための消化液。コレステロールの排泄経路にもなっている)が流れる経路に石(結石)が認められることを胆石症と言います。もともと胆汁中にはコレステロールをはじめとした結石の成分を多く含んでいるため、何らかの原因で胆汁の流れが悪くなると、コレステロール等の成分が胆汁中に折出して胆石ができてきます。
胆石症は結石の存在する場所により①胆嚢結石 ➁総胆管結石 ③肝内結石 と分類されます。頻度は①の胆嚢結石が一番多いです。
典型的なのは(特に脂っこい)食事を摂った後の右季肋部(右肋骨の下)~心窩部(みぞおち)の痛みです。
腹部の「違和感」程度の痛みしか感じないこともあります。胆嚢炎を起こすと発熱にを伴うこともあります。
また、総胆管内に結石ができたり、胆嚢から結石が総胆管に落下すると、腹痛に加えて黄疸や高熱が出る事もあり、放置すると命に関わることもあります。
以前は肥満体形の中年以降の女性に多いとされてきましたが、近年では、おそらく食生活の変化だと考えられていますが、性別や年齢を問わず、胆石がみつかることがあります。
また若い方で胆石を発症する方の中には、先天的な胆道系の奇形を伴っていることがあるので、注意が必要です。
胆石を持っていても生涯にわたり症状の出ない人が3分の2を占めており、これを無症候性胆石と呼びます。無症候性胆石は偶然に検診の超音波検査やレントゲン撮影で見つかることが多いです。
無症候性胆石症は必ずしも治療の必要がありませんが、生涯症状が出ないという保証はありません。
胆嚢炎を起こしたときには治療が必要になりますが、再発がない根本的な治療には、胆嚢摘出術が必要となります。
患者さんの状態により、発症後72時間以内に準緊急で胆嚢的手術を行う場合と、いったん外から胆嚢内に管を差し込み、胆嚢内にたまっている膿を体外に排出させて、炎症を抑えてから予定で胆嚢摘出術を行う場合とがあります。
ほとんどが腹腔鏡で胆嚢を摘出することが可能ですが、炎症が強い場合や胆嚢炎をこじらせた場合は、開腹手術に移行する可能性が出てきます。
総胆管結石は、胆管に詰まる可能性が高く症状を起こすと重篤になりやすいため、症状が出なくても治療が必要になってきます。
総胆管結石の原因としては、胆嚢結石が総胆管に落下したものや、胆管の先天的な奇形などで胆管の胆汁の流れが悪くなることで、最初から総胆管に結石ができてくる場合とがあります。
胆嚢から落下してきた結石の場合は、内視鏡下に胆管の十二指腸の出口から、逆行性に石を取るためのカテーテルを入れて、内視鏡的に総胆管結石を除去した後に、再度胆嚢から結石が胆管に落下しないように、あまり期間を空けずに腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。
最初から総胆管に結石ができてきた場合は、胆管の胆汁の流れが悪くなった原因によって、治療内容が変わります。
技術的には手術で胆石だけを摘出することはできます。しかし一度、胆石が出来てしまった胆嚢は、再度胆石が発生し胆嚢炎を起こす可能性が高いので行われません。
胆嚢を摘出しても日常生活には支障はありません。今までどおりの食事が可能です。脂っこい食事を摂っても、胆嚢自体がないため胆嚢炎は起きません。
お腹の中に低圧の炭酸ガスを入れ、お腹をドーム状に膨らませ、手術のスペースを作ります。腹腔鏡という内視鏡を臍から入れて、これで術野を観察しながら手術を進めていきます。手術中に器械はみぞおちと右の肋骨の下に1~2か所、それぞれ3~5mmのキズに留置した筒を通してお腹の中に入れます。
腹腔鏡下胆嚢摘出術では、腹壁の組織の損傷が少なくなるために、従来の開腹手術に比べ術後の回復が早く、入院期間や社会復帰までに要する時間が短くなります。当院では、術後4日目に退院するのが標準的です。また術後の創の痛みは従来の開創手術に比べ、遥かに少なく、キズ跡がほとんど残らないなど美容的にも優れた手術です。当院では、抜糸の必要のない方法でキズを縫っています。
年度 | 腹腔鏡下胆嚢摘出術 件数 |
2018年度 | 76件 |
2019年度 | 87件 |
2020年度 | 61件 |
2021年度 | 82件 |
当院での腹腔鏡下胆嚢的手術の標準的な入院期間は、計6日間です。
入院日数 | スケジュール例 |
1日目 | 入院、手術の準備 |
2日目 | 手術 |
3日目 | 食事再開 |
6日目 | 退院 |
3割負担の場合、約17万円です。