厚生労働省の統計によると日本全体で年間13~15万人程度の方が鼠径部ヘルニアの手術を受けていると推測されます。ヘルニアは子供でもなりますが、日本では9割が15歳以上であり、65~80歳の間に多くの方が手術を受けています。また女性の患者さんも1-2割存在します。
痛みや違和感が出たり、稀ですが飛び出した内臓がおなかのなかに戻らなくなり、血の流れが悪くなってくさってしまうことがあります。
鼠径ヘルニアは、手術のほかに治す方法はありません。
当院では、年間約100例の鼠径ヘルニア手術を行っています。
当院では、鼠径部を3-4cm切開する鼠径部切開法を行うことが多いですが、再発・両側ヘルニアなど、タイプによっては腹腔鏡で行う場合もあります。鼠径部切開法でも腹腔鏡でもおなかのかべが弱くなったところに、医療用のメッシュをいれます。
入れたメッシュが安定するまで数週間は激しい運動は避けてもらっていますが、それ以降は制限はなく、安心してジムのトレーニングやゴルフを楽しんでもらうことができます。
鼠径ヘルニアの手術は、1時間程度の消化器外科のなかでは小さな手術です。しかし麻酔をかけて手術することにより、脳梗塞や肺炎など、大きな合併症を起こすこともあります。
当院では手術前に、心臓や肺、血栓などの検査、75歳以上では頚動脈のエコーをルーチンに行っており、手術によってこれらの臓器の合併症がおこることを最大限に予防しています。もともと持病がある方、また検査で新たな異常が見つかった場合は、それぞれの専門科の医師と相談し、適切な管理や麻酔方法を検討しています。
以下は当院における鼠径ヘルニアのクリティカルパス(入院中の予定スケジュール表にして標準化したもの)です。
クリティカルパスどおりにいった場合、費用は3割負担で約11万円となります。
スケジュール | 予定 |
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手術前日 | 午前入院。 病棟案内・麻酔科診察など |
手術等当日 | 朝まで飲水可能です。いつも飲んでいる薬も内服します。 手術後は、遅い時間でなければ夕食を食べることができます。 |
手術翌日~翌々日 | 医師による装具や全身状態の診察があります。 質問があれば、何でも聞いてください |
術後3日目 | 退院。 もともと持病のない方、お若いかたなどは、術後の日数を短縮する場合もあります。 |
臍ヘルニアは、おへそが飛び出る疾患で、いわゆる”でべそ”の状態です。鼠径ヘルニアと同様に筋肉の膜が弱くなったところから、腹膜といっしょに腸などの内臓が飛び出る病気です。乳幼児期に臍ヘルニアはよく見られますが、成長とともに筋肉が発達して自然に治ることも多くあります。大人になってからの臍ヘルニアは腹圧や肥満が関係しており、一度なると自然には治りません。
鼠径ヘルニアと同様、メッシュで修復するのが一般的です。
鼠径ヘルニアとおおむね同じスケジュールです。