治療方針を決めるにあたって、まず大腸癌の病期(ステージ)を確認することが必要になります。壁深達度(癌が大腸の壁にどれぐらい深く入り込んでいるか)、リンパ節転移の有無、肝や肺などへの遠隔転移の有無、これらによって病期が決定されます。
壁深達度が浅いステージ0とステージⅠの一部に対しては、内視鏡的切除が検討されます。リンパ節転移のリスクのあるステージⅠ、壁深達度が深いステージⅡ、リンパ節転移を伴うステージⅢに対しては、手術による切除を考慮します。
遠隔転移を伴うステージⅣに対しては、全ての病変が切除可能であれば積極的な切除を、原発巣による症状はあるが遠隔転移が切除不能であれば、原発巣切除と化学療法を、無症状だが遠隔転移が切除不能であれば化学療法を行います。
遠隔転移 | なし
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あり
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リンパ節転移 | なし | あり | 問わず | |
壁深達度 | 粘膜
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0 | Ⅲ | Ⅳ |
粘膜下層
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Ⅰ | |||
筋層
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漿膜下層
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Ⅱ | |||
漿膜以深
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手術室
当科では手術治療と化学療法を主に担当しています。手術では、病変を含む腸管と、その領域を含むリンパ節を合わせて切除します。近年、大腸領域では、低侵襲であるといわれる腹腔鏡手術が急速に普及してきています。腹腔鏡は従来の開腹手術と比べ、出血量が少ない、創感染が少ない、入院期間が短いなどのメリットが多い一方、手術時間の延長や、手術の難易度が上昇するなどの指摘もあります。NCD(National Clinical Database)による2019年の全国データによると、腹腔鏡での手術施行率が、低位前方切除術で70%、結腸右半切除術で52%に達しています。当科でも腹腔鏡手術に力を入れており、2020年に行われた全大腸手術のうち、77%を腹腔鏡で行っています。
外来化学療法センター
大腸癌治療のもう一つの柱は、化学療法になります。当院では手術に引き続き、外科で行っています。殺細胞性薬剤や分子標的薬、免疫療法薬などを組み合わせて使用することで、切除不能・再発大腸癌患者さんの生存期間中央値は30か月を超えるところまできています。患者さんの病状やライフスタイルを考慮して、入院または外来で行っています。外来には化学療法室を完備し、患者さんのストレスを少しでも軽減し、安心して治療を受けられるように配慮しています。
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