耳は大きく分けて外側から外耳、中耳、内耳の3つに分けられます。
外耳は鼓膜の外側、内耳は鼓膜の奥で骨に包まれ、蝸牛や三半規管、前庭からなります。中耳は外耳と内耳の間にあり、ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つの耳小骨がある場所です。急性中耳炎は、この中耳に急性の炎症が生じたもので、痛みや耳漏、発熱などの症状が出ます。小児では発熱や不機嫌、耳の痛みなどから急性中耳炎の可能性を疑います。
耳の構造
まず鼓膜を観察させていただき、鼓膜の炎症の強さをもとに症状や年齢なども加味して治療方針を決めます。
炎症が比較的軽症な場合は対症療法だけでも自然軽快します。中等度の場合は抗菌薬投与を行い、重症の場合は鼓膜切開で膿を吸引して治療します。
通常は発症後3~4週間以内で治癒しますが、経過には個人差があり、所見次第では鼓膜チューブを留置するなど治療を追加することもありますので、定期的に外来通院していただく必要があります。
急性中耳炎を反復し、中耳の鼓膜や骨に慢性的な炎症が生じるために耳漏が持続してしまう状態です。多くは鼓膜穿孔を伴うため、中耳内圧が高まらず、痛みは生じません。
急激に耳漏が悪化した場合には抗菌薬の点耳や局所処置により消炎を図ります。
炎症が落ち着いている場合でも一般的に聴力悪化を伴うため、根本治療は手術になります。耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨)の破壊を伴う場合は、鼓室の中まで操作を加えるため、全身麻酔下での手術になりますが、鼓膜穿孔のみの場合は穿孔を閉鎖する手術をすることになります。鼓膜穿孔の閉鎖は、全身麻酔下で行う場合もありますが、穿孔の程度によっては日帰り手術で行うこともできます。
当院では、穿孔を覆う素材としては筋膜や医療用のゼラチンスポンジ(リティンパ®)などを用いています。この医療用のゼラチンスポンジ(リティンパ®)は、昨年(2019年)認められた新しい素材です。筋膜を採取するために耳の後ろを切開する必要もありません。
このように慢性中耳炎の治療もさまざまな選択肢が生まれてきています。「手術は気が進まない」、「入院治療はどうも・・・」と考えていた方もご相談ください。